【コラム】コミュニケーションはスパイスカレー
はじめに
仕事柄、「コミュニケーションのコツは?」「1on1を上手くやり遂げるには?」のようなご質問を受けることがよくあります。
「どう説明したら、イメージがしやすいかなぁ?」と私なりに考えた末、出てきた例えが「コミュニケーションはスパイスカレー🍛」でした。
ちなみに、私は(もちろん?)スパイスカレーを作ったことがありません。そんな私が考えた例え話ですが、お時間がある方はぜひ読んでみてください!
(私の素晴らしい友人にカレーを作るのが本当に上手い人がいるんです。私は彼女のことを「天才」だと思っています!👑)
ちなみに、このコラムは「会社で1on1を実施しなければならないマネージャーのみなさんに役立つ」はず!(意気込み)です。👍
同じ「スパイスカレー」でも使うスパイスは人それぞれ
例えば、1on1の場で、部下が「スパイスカレーを作るのが趣味なんです」という話を始めたとしましょう。
上司は、「へぇ!そうなんだ!」と答えるかもしれません。
でもちょっと待ってください!
上司も部下も「スパイスカレー」という同じ言葉を使っていますが、実は使っているスパイスの種類が全く違う可能性があります。
上司は、「市販のカレー粉にガラムマサラを少し足す程度」をイメージしているかもしれません。一方で部下は、「クミン、コリアンダー、ターメリック、カルダモンなど10種類以上のスパイスを調合している」かもしれません。
同じ「スパイスカレー」でも、実際の中身は大きく異なるのです。
コミュニケーションでは、この違いに気づくことがとても大切です。
相手が使っている言葉の背景にある「スパイス」(お互いの、少しの違い)を理解しようとする姿勢が、真の理解への第一歩となります。
質問の「スパイス選び」で関係性が変わる
「スパイスカレーを作るのが趣味!」という部下に対して、上司はどんな質問をするでしょうか。
「どんなスパイスを使っているの?」
「どこで材料を買っているの?」
「作り方を教えて!」といった質問は、確かに情報は得られます。
興味を持ったから、知りたいから聞いているので、一見すると「部下に興味を持っている」かのように見えますが、実は「自分(上司)のための質問」なのです。
部下の立場から見たら、どうでしょう?
「私のことじゃなくてスパイスカレーのことを知りたいんだな。」
と思うのではないでしょうか。
一方で、
「なぜスパイスカレーを作り始めたの?きっかけは?」
「作っている時はどんな気持ち?」
「どういうところに楽しいと感じるの?」
といった質問は違います。
これらは部下の価値観や想い、体験を深掘りする質問です。「相手を理解しようとする質問」と言えるでしょう。
質問という「スパイス」の選び方一つで、その後の関係性の味わいは大きく変わってくるのです。(ちょっと「上手いこと言った感」を出してみました。)
レシピの共有と個人の味の尊重
スパイスカレーは面白いもので、同じレシピを使っても作る人によって微妙に味が変わります。火の強さ、スパイスを入れるタイミング、煮込む時間など、作り手の個性が反映されるのです。
コミュニケーションも同じです。
同じ内容を伝えても、受け取る人によって解釈は変わります。経験、価値観、その時の状況によって「味わい方」が異なるのです。
作る人は、「(自分にとっての)正解のレシピ」「決定版スパイスカレー!」を押し付けるのではなく、受け取る人が感じ取る「味」を尊重することも大切です。
「おっ!今の話をそう感じたんだね!」「ちょっと意図したところと違ったけど、そういう受け取り方もあるのか〜。(涙)」と一旦受け止める姿勢が、豊かなコミュニケーションを生み出します。
火加減の調整(タイミングの重要性)
スパイスは入れるタイミングによって香りや味が大きく変わります。最初に入れるスパイス、中盤で加えるスパイス、最後の仕上げのスパイス。それぞれに意味があります。
コミュニケーションでも、伝えるタイミングは極めて重要です。
相手が忙しそうな時に重要な話を切り出しても、「スパイスの香り」は立ちません。
相手の状況や心理状態を見極めて「火加減」を調整する必要があります。
「今この瞬間に、聞く耳はできているか?受け止めることができる心の状態か?」に気づくことが大切なのです。
時には強火で一気に、時には弱火でじっくりと。相手に合わせた「火加減の調整」ができるかどうかが、コミュニケーションの成否を分けることがあります。
隠し味の存在
スパイスカレーには、クミンやコリアンダーといったメインのスパイス以外に「隠し味」があります。少量のはちみつ、隠し味程度のしょうゆ、あるいはちょっとしたヨーグルト。これらが全体の味わいを深めます。
コミュニケーションにも「隠し味」があります。
言葉以外の要素、つまり表情、声のトーン、身振り手振り、そして沈黙のタイミング。
きっと、ナチュラルに受け止めたり受け流してしまうであろうこれらの要素、つまり「隠し味」が、コミュニケーション全体の印象を大きく左右することがあります。
メインの「言葉」という素材にばかり意識が向きがちですが、実は「隠し味」の方が相手の心に深く響くことも多いのです。
失敗からの学び
時に、スパイスの配合を間違えることもあります。
塩を入れすぎた、スパイスが効きすぎた、逆に物足りなかった。
でも、そんな失敗があるからこそ、次回はより美味しいカレーが作れるようになります。
コミュニケーションでも同じです。
相手を不快にさせてしまった、伝えたいことが伝わらなかった、タイミングを間違えた。そんな「失敗」は誰にでもあります。
大切なのは、その失敗を次回に活かすことです。
「今度はもう少し相手の立場に立って考えてみよう」「次はタイミングを見計らってから話そう」。
失敗という「苦い経験」が、次のコミュニケーションに活きてくるのです。
私は、みなさんに「コミュニケーションは失敗するほど上達する」とお伝えしています。
「失敗ちゃったけど、やってみた。トライできたことは素晴らしい。」と、まずは自分を褒めてみましょう。
ここで自分を褒めることができる上司は、部下の稚拙なトライも、心から褒めてあげることができるでしょう。
完成までの過程を楽しむ
スパイスカレーの魅力は、完成品だけにあるのではありません。
玉ねぎを炒めている時の甘い香り、スパイスを加えた瞬間に立つ芳醇な香り、煮込んでいる間に徐々に変わっていく色と香り。
その過程全体が楽しみなのです。
コミュニケーションも同様です。
「結論を伝える」「問題を解決する」といった結果も大切ですが、そこに至るまでの対話のプロセスそのものに価値があります。
相手の考えが少しずつ見えてくる瞬間、お互いの理解が深まっていく感覚、新しい視点に気づく驚き。
これらの「過程の楽しみ」を味わえるようになったとき、コミュニケーションはもっと豊かなものになるはずです。
おわりに
ここまでスパイスカレーに例えてコミュニケーションについて語ってきましたが、正直なところ、私は今後も作る予定はありません。😆
でも、この比喩🍛を考え出す作業を通じて、コミュニケーションの奥深さと面白さを改めて感じています。
相手との対話は、レシピ通りにはいきません。
その時々で「スパイス」を選び、「火加減」を調整し、「隠し味」を効かせながら、一つひとつ丁寧に「調理」していく。
そんな心構えで、明日からまた1on1に臨んでみましょう。
コミュニケーションには、得意不得意があります。そして、どのコミュニケーションにも「味わい」があります。
ここまでの内容で、「できているな」「こういう視点もあるのか」「できていなかったな」と感じられた部分があったら、ぜひ、次の1on1で意識してみてください。👍
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